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『いただきます』
皆の声が揃う。そして、一斉に食べ始めた。
「なぁ、今日森に行ってきたんだが」
アインがやけに赤いスープを見ながら口を開いた。
「ああ、私が頼んだレッドマンドラゴラ、とってきてくれてありがとう」
答えるのはミラ、今日の料理当番である。
「レッドマンドラゴラ……あいつ、あまり赤くなかったが、なんであんな名前なんだ?」
「ああ、それはね、薬の調合を見れば分かるよ。ほら、これ」
腰に着けていた袋を外し、アインに渡す。開けてみると、中には真っ赤な粉。
「これは?」
「レッドマンドラゴラをすり潰した粉。甘いし、色もいいし、滋養強壮の定番品!」
「へぇ。乾燥させて粉にすると赤くなるのか。甘くて、いい赤で……え?」
口に残っている味と、言ってることが一致した。
「どうかしたか、アイン?」
「その袋、何が入っているんですか?」
別の話をしていたニコラとマリアが話に入ってくる。2人の皿の中身は、空である。
「いや、これはレッドマンドラゴラって奴の粉末でな。レッドマンドラゴラ、見たこと有るか?」
「有るに決まっているだろ。俺は魔物使いだぞ? ……ただ、おぞましい姿だからあまり見たくはないがな」
「そうなんですか?私は見たことが有りませんが、マンドラゴラですから鳴き声が酷いんですよね?」
「……まぁ、そうだな」
そのおぞましい姿と酷い鳴き声の魔物がスープに使われていたかもしれない、なんて言えるわけが無かった。
「おい、ミラ……」
「知らぬが仏、って言葉が遠くの大陸に有るそうだよ?」
遠回しに肯定された。調理中の歌からして、この肉もトカゲなのだろうか。
「……美味い」
スープを一すくいし、何か諦めたようにアインは言った。
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