1食目・安全でも食べるのが怖いものは確かに有る

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『いただきます』  皆の声が揃う。そして、一斉に食べ始めた。 「なぁ、今日森に行ってきたんだが」  アインがやけに赤いスープを見ながら口を開いた。 「ああ、私が頼んだレッドマンドラゴラ、とってきてくれてありがとう」  答えるのはミラ、今日の料理当番である。 「レッドマンドラゴラ……あいつ、あまり赤くなかったが、なんであんな名前なんだ?」 「ああ、それはね、薬の調合を見れば分かるよ。ほら、これ」  腰に着けていた袋を外し、アインに渡す。開けてみると、中には真っ赤な粉。 「これは?」 「レッドマンドラゴラをすり潰した粉。甘いし、色もいいし、滋養強壮の定番品!」 「へぇ。乾燥させて粉にすると赤くなるのか。甘くて、いい赤で……え?」  口に残っている味と、言ってることが一致した。 「どうかしたか、アイン?」 「その袋、何が入っているんですか?」  別の話をしていたニコラとマリアが話に入ってくる。2人の皿の中身は、空である。 「いや、これはレッドマンドラゴラって奴の粉末でな。レッドマンドラゴラ、見たこと有るか?」 「有るに決まっているだろ。俺は魔物使いだぞ? ……ただ、おぞましい姿だからあまり見たくはないがな」 「そうなんですか?私は見たことが有りませんが、マンドラゴラですから鳴き声が酷いんですよね?」 「……まぁ、そうだな」  そのおぞましい姿と酷い鳴き声の魔物がスープに使われていたかもしれない、なんて言えるわけが無かった。 「おい、ミラ……」 「知らぬが仏、って言葉が遠くの大陸に有るそうだよ?」  遠回しに肯定された。調理中の歌からして、この肉もトカゲなのだろうか。 「……美味い」  スープを一すくいし、何か諦めたようにアインは言った。
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