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『いただきます』
皆の声が揃う。そして、一斉に食べ始めた。
「あれ……ニコラちゃんにしては上手に出来たね」
「ニコラちゃん言うんじゃねぇ!」
隣に座るミラに、料理当番のニコラが手刀を見舞った。本気の攻撃である。
「いたっ!いいじゃん、褒めてあげたんだから!」
「お前にそんな上から見られる覚えはねぇ。アインがいなかったお前ごとき、すぐにドラゴンのエサだ」
「怖っ!」
本気で引くミラ。アインが溜め息をつく。
「その辺にしとけ。これはマリアが手伝ったんだろ?」
「はい。というか、ほとんど私です」
だよなぁ、と笑うアイン。ニコラの料理の腕は致命的なのだ。
「貴族ってあまり料理するイメージが無いが、マリアは料理上手いよな」
「そうそう、マリアちゃんがフォローしなければ毎回ニコラちゃんの回はじごぐふっ」
「じごぐふっ? 何だ、それはお前なりの褒め言葉か?」
勿論そんなわけは無い。ミラとしては『地獄』と言いたかったのだが、テーブルの下でニコラに鳩尾を殴られて最後まで言えなかったのだ。
「違うよ! お腹はダメだよお腹は! せっかく食べたもの戻しちゃうよ!」
「安心しろ、戻ってきたものを俺がお前の中に戻してやる」
「安心できないよ! 新手の拷問だよ!」
喚くミラ。天才のはずなのに、精神的にかなり幼いのが大きな欠点である。
「戻す戻さないはお前らの自由だが、ニコラは料理の練習しないのか? いつまでもマリアに手伝ってもらうわけにもいかないだろう?」
「マリアがずっと一緒にいてくれるなら、問題ないだろ」
「えっ?」「え」「ほう…」
マリアは真っ赤になった。ミラは目を丸くして制止した。アインは面白そうに笑みを浮かべる。
「うん? お前らどうかしたのか?」
「あ……いえ、でも、少しは自分でできた方がいいと思いますよ」
しかし、ニコラの言葉に大した意味は無いようだった。少々がっかりした様子のマリアが応える。
「なんだ、ニコラにその気は無いんだね……つまんないな~」
「料理の腕云々でお前に文句言われる筋合いは無い」
「そうじゃないだろ。ミラが言ってるのは別のことだ」
「は?」
ニコラは疑問符を量産する。しかし、彼にはこの空気が読み解けそうもなかった。
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