2食目・レシピは読まない

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『いただきます』  皆の声が揃う。そして、一斉に食べ始めた。 「あれ……ニコラちゃんにしては上手に出来たね」 「ニコラちゃん言うんじゃねぇ!」  隣に座るミラに、料理当番のニコラが手刀を見舞った。本気の攻撃である。 「いたっ!いいじゃん、褒めてあげたんだから!」 「お前にそんな上から見られる覚えはねぇ。アインがいなかったお前ごとき、すぐにドラゴンのエサだ」 「怖っ!」  本気で引くミラ。アインが溜め息をつく。 「その辺にしとけ。これはマリアが手伝ったんだろ?」 「はい。というか、ほとんど私です」  だよなぁ、と笑うアイン。ニコラの料理の腕は致命的なのだ。 「貴族ってあまり料理するイメージが無いが、マリアは料理上手いよな」 「そうそう、マリアちゃんがフォローしなければ毎回ニコラちゃんの回はじごぐふっ」 「じごぐふっ? 何だ、それはお前なりの褒め言葉か?」  勿論そんなわけは無い。ミラとしては『地獄』と言いたかったのだが、テーブルの下でニコラに鳩尾を殴られて最後まで言えなかったのだ。 「違うよ! お腹はダメだよお腹は! せっかく食べたもの戻しちゃうよ!」 「安心しろ、戻ってきたものを俺がお前の中に戻してやる」 「安心できないよ! 新手の拷問だよ!」  喚くミラ。天才のはずなのに、精神的にかなり幼いのが大きな欠点である。 「戻す戻さないはお前らの自由だが、ニコラは料理の練習しないのか? いつまでもマリアに手伝ってもらうわけにもいかないだろう?」 「マリアがずっと一緒にいてくれるなら、問題ないだろ」 「えっ?」「え」「ほう…」  マリアは真っ赤になった。ミラは目を丸くして制止した。アインは面白そうに笑みを浮かべる。 「うん? お前らどうかしたのか?」 「あ……いえ、でも、少しは自分でできた方がいいと思いますよ」  しかし、ニコラの言葉に大した意味は無いようだった。少々がっかりした様子のマリアが応える。 「なんだ、ニコラにその気は無いんだね……つまんないな~」 「料理の腕云々でお前に文句言われる筋合いは無い」 「そうじゃないだろ。ミラが言ってるのは別のことだ」 「は?」  ニコラは疑問符を量産する。しかし、彼にはこの空気が読み解けそうもなかった。
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