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「あら、どうしたの?そこの彼」
葵の視線は男女二人組――、瑞希桜ではなく見慣れない青年へと向けられていた。
「仕事先で拾った。記憶喪失らしいから少し診てあげて」
勝手に接客用のソファに腰掛けながら桜は簡単な説明をする。
「ええ。わかったわ。他でもない貴女の頼みだもの。ところで少年、キミの名前は?」
慣れているのか、状況を理解した葵は青年を少年呼ばわりしながら診察に必要そうな器具を揃える。
元々人体に関する魔術の研究を行う彼女だ。その程度の器具は一通り揃えてある。
「俺の名前は無い。記憶があればわかったのだろうが……」
「そう……なら、しばらくの間はジーク、とでも名乗ってみたら?」
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