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なんで気づかなかったんだろう。
これはダーツもどきなんかじゃないボウガンの矢だ。背中を向けられていてよくは見えないが、奏の手にはボウガンらしきものが握られていた。
しかしまだわからない。奏は何をしているんだ?その男は一対誰なんだ?どうして色がついてる?
「超時間加速空間、展開」
そんな俺の思考を無視して奏はボソッと呟く。同時に奏の拳が淡く光り始める。
そして奏は拳を腰の高さに落として力を込め、
「っ!」
そのまま拳を男に放つ。瞬間。小さなブララックホールの様な物が現れて男の赤を飲み込む。
一体何が起きてるんだ?全く訳がわからないまま事は進む。
「ふぅ。やっと終わりか」
言いながら振り向いた奏と目が合う。
「……え?」
「……」
お互いに沈黙。その沈黙を破ったのは能力の終わり。
モノクロの世界がひび割れ、崩れ落ちる。それと同時に、赤い花が咲いた。
プシャアアアアアアアッ!!
視界が赤に染まる。
その赤が男から吹き出してその血の一部が俺の頬に飛んだ。
温かい。これは血だ。恐怖はあったが俺は、自分でも驚くほどに冷静だった。
この一連の現象には覚えがある。ハナサキ殺人。母さんが死んだあの時と同じだ。
その犯人が奏だっていうのか?この現象に奏が関係しているのか?
俺が頭をめぐらせていると奏が口を開いた。
「お、お兄ちゃん……」
言いながら奏は一歩俺の方に踏み出す。
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