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「………」
しかし俺は返す言葉を見つけることができない。かわりにしたことは奏に合わせて一歩後ろに下がった事。相手は奏だ。だがハナサキ殺人の犯人かもしれない。大切な妹のハズの奏に、今は疑念と恐怖を抱いていた。
「くそっ!」
俺はいたたまれなくなって奏に背をむけ、走り出す。
「お兄ちゃん!!」
後ろで奏の声がするが聞こえないフリをする。別に恐かったわけではない。確かに少なからず恐怖は感じていたが逃げ出すほどではなかった。ただ、今はあれ以上奏の顔を見ていたくなかった。でも、もし奏がハナサキ殺人の犯人だとしたら………。
「うおっ!」
走りながら考え事をしていたからか、俺は人に肩を思いっきりぶつけてしまう。相手のがたいがいいのか俺は後方に吹っ飛ばされた。
「す、すいません」
俺は頭を下げながらチラッと相手を見ると、どうやら相当がたいのいい男だったようで、ボディガードか何かなのかぴっしりとスーツを着込んでいた。なんか恐いなこの人。そのまま男の腋をすり抜けようとした時だ。俺の頭にノイズが走り、世界が色を失い無機質な世界に成る。
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