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「お兄ちゃん、大丈夫?」
優しい言葉と共にさしのべられた綺麗な手。見ると、その手の持ち主は我が妹檻姫奏(おりひめかなで)だった。
少し子供っぽいが、整った容姿。
尻尾の様に揺れる黒髪のポニーテール。誰がどう見ても美少女。自慢の妹だ。
「ああ、ありがとう奏」
俺は奏の手をつかみ、立ち上がる。
「どういたしまして!」
我が妹ながらかわいい。奏が妹じゃなかったら惚れてる自信があるぞ俺。
「お兄ちゃん今帰り?」
「ああ」
「そっか。なら一緒に帰る?」
自然な流れで誘われてしまった。
なにこれギャルゲーですか。
「そうだな。じゃあ一緒に帰ーーーーーー」
言いかけた時。俺の“能力”が発動した。
頭にノイズが走る。
そして俺以外の世界がモノクロになり静止する。
これは、現在俺だけが見えている世界。
『奏~!一緒にかえろ~!』
『今日31のアイス半額なんだ!よってこよってこ!』
その止まった世界で色のない女子高生二人組が奏に駆け寄る。
『ああっそのーーーーーーーーー』
奏がなにかを返そうとしたのを打ち消す様にモノクロの世界は崩れ落ち、もとの色のついた世界に戻る。
「………やっぱいいや。俺は一人で帰る」
「え、お兄ちゃーーー」
「じゃあな」
俺は言いながら奏の脇をすり抜る。
「ちょ、ちょっと!」
「奏~!一緒にかえろ~!」
奏は俺を呼び止めようとするが、駆けてきた友達だろう女子高生に遮られる。
「今日31のアイス半額なんだ!よってこよってこ!」
俺は背中で女子高生の声を聞きながら、足を進めた。
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