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「おっふぉ」
リビングの扉を開けた瞬間。心地よい冷気が俺の身体を駆け抜ける。その気持ちよさに思わず変な声を出してしまった。
やっぱいいなクーラー。
「あれ、お兄ちゃん起きてたんだ」
「ん、ああ」
リビングにはソファで雑誌を読む奏がいた。つかお前それ俺のヤンジャンじゃねえか。
「よっと」
俺はドカッと奏の隣に腰掛けて、テレビをつける。ちょうどニュースがやっていた。
『ーーーでは、次のニュースです。7月23日の午後7時30分に初音駅前でハナサキ殺人により、伊藤誠(21)さんが殺害されました。えー10年前に初めて起こり、現在に至るまで計18名の死亡者を出しているこの事件ですが、未だに犯人は見つかっておらずーーーーーーーー』
ハナサキ殺人。
ハナサキ殺人とは何の前触れもなしに被害者の体から文字通り花の様に血が噴き出して、被害者は死亡してしまう怪奇的な連続殺人事件。
そう、忘れもしない10年前のあの日。ハナサキ殺人の最初の被害者。俺の母親檻姫千鶴(おりひめちづる)は俺の目の前で唐突に、死んだ。いつも通り普通に話していたと思ったらいきなり視界が赤に染まって……
「っ!」
耐えきれず俺はテレビの電源を切った。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「……ああ、大丈夫だ」
夏休み初日から気分が沈んでしまった。
全く、気持ち悪い事件だ。さっさと犯人とっつかまえて殺して欲しい。この事件が無ければ今頃母親は……
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