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◇
『YOU LOSE』
画面から渋いおっさんの声。
「うっしゃあああ!!対人戦で初めて勝てたあああ!!」
「うっせえな」
「マジうれしこれ!パネェ!!」
「俺の方が強いけどな」
「「ハハハハッ!!」」
さらに向かいから若者数人の歓喜の声。
「ちっ」
こんな奴らに負けるなんて……やっぱり今日は調子が悪い。この剛拳というゲームはやりこんでいて、いつもの勝率は8割ぐらいなのに今日は5割にも満たない。今もチャラチャラしたDQNっぽいグループに負けてしまった。
「……帰ろ」
別に誰かが並んでいたわけではないが、連コインする気分でもないし時間もそこそこに過ぎた。モヤモヤした気持ちは全然消えてないが、とりあえず落ち着いたので帰ってギャルゲーでもしてればこのモヤモヤも消えるだろう。
俺はゲーセン特有の喧噪を背中に受けて、外にでる。
「あづっ………て程でもないか」
既に日は落ち掛けていて、風も吹いていたのでそこそこに涼しい。まあ、昼間に比べてだから普通に暑いのだが。
「メイトにでもよって帰るか」
そう呟き歩き出した時、頭にノイズが走った。
見える世界が色を失い、俺以外の全てがモノクロの、無機質な世界に成る。
未来予知……か。
「………」
しかし何かがおこる兆しはまっまくない。そこで俺は違和感を感じた。音がない。と言うか動いてるモノがない。車も人も空を飛ぶ鳥だって写真のよう静止している。
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