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そしてそんな大混乱の作戦本部に、伝達兵が駆け込んで来た。
「報告!!!
アーサー・シュバイツァー総大将は単独任務に当たっているため、エインヘリャル軍の指揮権は次席の者に移行せよとの命令です!!!」
その報告を聞いた副将軍、つまり突然指揮権を渡された男は一時言葉を失った後激昂して叫ぶ。
「この国の軍の全権を任された総大将が単独任務など、そんな馬鹿な話があって堪るか!!!!
それに、何故そのような重要な事がこちらに伝わっていないのだ!!?
ふざせるのも大概にしろ!!!」
「そ、そう言われましても私は"王から"直々に聞かされた事を報告しただけでして…………………」
「ならば"剣"は何処に有る?
あれが無ければエインヘリャル軍の指揮権は─────」
「それならば此処に。」
エインヘリャル軍の指揮権を意味する"剣"を差し出されたのを見て、副将軍は一瞬気が遠くなりそうになる。
いくら儀礼的な物とは言え、このような重要な物をたかが一兵卒に持たせるとは………………
本来ならば、緊急の時でさえも本人から引き継ぎを行わねばならぬ規則があると言うのに。
一体この国で何が起こっているのだ?
人目が無ければ頭を抱えて王や非常事態にも姿を表さない総大将に対して罵りの言葉でも吐いていたであろうが、
流石に総大将に次ぐ副将軍として今はそんな事をしている場合ではない。
暫定的ではあるが"剣"を渡されたからには此度の大将として事態の収拾、打開をすべき。
そう判断した副将軍は不穏な空気の漂う作戦本部を一喝し、作戦会議に移ろうとした。
だが、その時。
「報告!!!」
副将軍の出鼻を挫くように、報告の兵が慌てて作戦本部に入って来た。
「今度は何だ!!!?」
もう勘弁してくれと思う副将軍だが、追い討ちをかけるように報告の兵士は告げる。
「ニブルヘイム解放戦線とヴァルハラナイツが衝突し─────」
数分前。
士気高く、想定外の事態にもほぼ動揺する事なく出撃の準備を終えていたエインヘリャル軍精鋭部隊ヴァルハラナイツ。
王城の内側にある中規模の軍事演習もできる広大な中央広場に、
彼らヴァルハラナイツは命令があれば直ぐにでも出撃できるよう整列し待機していた。
彼らに倣うように周りの兵士達もいそいそと準備を行っていたが、ここで誰もが予想していなかった事が起きた。
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