終章 果てた夢 進撃ノ刻

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たった一人で10万の大軍勢を押し留めるのに、実に効果的な手段であった。 挑戦者が現れ続ける限りは。 「どうした、誉れ高き帝国の騎士は名ばかりの腰抜け揃いなのか!!!? そうでは無いと言うのならば、我が首を挙げて見せよ!!!!」 しかし、現れない。 その理由は、アルベルトが煽ったように帝国の騎士が腰抜け揃いだからではない。 強過ぎるのだ。 アルベルトは。 僅か3度の一騎討ちで見せ付けてしまった。 メルフィスの悪魔─アルベルトの強さを。 腕に覚えのある者程、どれ程自分とアルベルトが掛け離れているか痛感する。 そして武勇名高い騎士が足踏みするのを見て、武功を渇望する下位の騎士も一歩を踏み出せない。 そんな状況は芳しくない。 空白の時間が長くなる程、集団が動き出す可能性は高くなる。 だが、アルベルトには待つ事しかできない。 不穏な緊張感に包まれる帝国軍を刺激しないよう、馬上で王剣アロンダイトを構え佇むのみ。 あと一つ。 何か切っ掛けがあれば、どちらかに転ぶ。 このような場合、その切っ掛けを与えるのはやはり多くの可能性と選択肢を持った帝国軍の方であった。 「あれは英雄だ!!!!」 誰かが叫んだ。 「見ろ、あの巨大な剣を!!! あのような武器を、普通の人間が扱えるものか!!!」 英雄。 それは普通の人間とは一線を画する者。 体力や膂力は人の域を脱し、特殊な能力を秘めている者もいる。 つまり、普通の人間がまともに闘っても勝てる道理は無い。 ならば、例え誇り高き騎士であったとしても。 相手が英雄ならば、複数で挑んだとしてもそれは卑怯ではない。 「相手は英雄だ!!! 数で押せ、包囲して殺すのだ!!!!」 流れが完全に傾いた。 一騎討ちを強制する空気は撤廃され、数で強大な個を撃破する運びとなった。 稼げた時間は四半刻程。 最低でも5時間という条件を考えると絶望的だが、それでもその10分の1を凌げたのだ。 10万の大軍勢相手ならば破格と言えよう。 「行くぞ、私に続け!!!!」 横一列に並んだ戦線が崩れ、騎馬の一団が先行して槍のようにアルベルトへと迫る。 全軍が動き出す。 最早これまで。 アルベルトもそれに応じ、先頭の一団へ突貫する。 籠手から血が王剣アロンダイトに伝い落ちる。
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