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「どの店に行くか決めてる?」
「まだ決めてへんけど…お気入りの店でもあらはります?」
「ん…ちょっと。芹沢~ッ!」
返事もそこそこに嘉月は芹沢に向かって駆け出した。
「どうした?」
芹沢は相変わらず仲良く沙夜と手を繋いだまま歩いていた。
「菱屋!菱屋って知ってる?」
「…菱屋?先日、組の羽織を頼んだ菱屋の事か?」
「よし、ビンゴッ!」
確認を取った嘉月がまた女将の元へ駆け戻って行く。
「おい!……一体なんだったんだ?」
「さぁ?あいつ、また変な事でも思い付いたって顔してましたけどねぇ…?」
「……姉はんは変な事なんかせぇへんもん」
顔を見合わせていた男達が小さな呟きを聞き取り視線を下へと下げると、唇を尖らせた沙夜が上目遣いで新見を見上げていた。
「……新見」
「え?俺…?」
新見の視線が芹沢と沙夜の間で揺れる。
「……すまん」
新見は釈然としない思いのまま詫びの言葉を口にした。
揺れた新見の視線と共に、嘉月が言った「孫と爺さま」という言葉もまた新見の頭の中で揺れていた……
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