第十話

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「思ってません…忘れてたけど…」 女将の睨みに嘉月は素直に白旗を上げた。 「これは内緒ね?史実だとお梅さんは芹沢の恋仲か妾になるの。そのきっかけが屯所への取り立てなんだよ。だから菱屋」 美人と評判のお梅と悪名高い芹沢の組み合わせに女将は信じられないと目を見張った。 「史実通りなら二人共に亡くなるんだけど、そうならないように今、動いてるでしょ?だから上手く行けば芹沢は幸せになれると思うんだよね…だけど…」 今の芹沢が無理矢理お梅を押し倒したりするだろうか……? 二人は芹沢が強引に一戦交えた事からスタートしたはず。 「ねぇ女将…今の芹沢が嫌がる女の子相手にあ~れ~な事すると思う?」 判断がつかないと嘉月が小声で女将に聞く。 「あ~れ~って…アレの事言ってはる?」 つられて小声になった女将も小声で聞き返した。 「アレはアレだよ。お梅さんとは無理矢理芹沢がアレして始まったって伝わってるんだけど、今の芹沢が無理矢理ヤるとは思えないって言うか…」 お茶の事などさっぱり忘れ、廊下の片隅でヒソヒソ話をする様はおかしなものだが話に夢中な二人はその事に気付かない。 「ん?そんな所でなにしてんだ?」 突然、声を掛けられて二人は揃って飛び上がった。
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