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「ば、馬鹿!離せ!この状態で私が癒すとか言うな馬鹿!」
バッと嘉月の手を振り払った新見はそのまま廁に駆け込んだ。
「……お腹痛いの我慢させちゃってたのか」
あまりの慌てぶりに嘉月が新見の消えた廁へと同情の視線を送る。
「いちお芹沢に言っとこ」
新見の腹の具合を伝える為に嘉月は部屋に戻って行った――
―*―*―*―
「それじゃ行って来るから着物の方はよろしくね?」
芹沢には着物だけは自分で買うから芹沢の名でツケにしてくれるように頼んであった。
「沙夜、これも持って行け……女将」
呼ばれた女将が沙夜に小さな包みを差し出す。
「………?」
受け取った沙夜が芹沢を仰ぎ見た。
「卵どす。滋養のある物も持たせてやりたいって芹沢はんが…良かったな、沙夜はん」
芹沢の気遣いに目を見張った沙夜が芹沢に飛び付く。
「おおきに!芹沢はん…ッ!」
「こら。せっかくの卵が割れるぞ?明日、迎えをやるから今日は泊まって来い。いいな?」
一頻り沙夜の頭を撫でた芹沢に早く行くように促され、嘉月達は沙夜の家に向かって歩き出した。
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