第十話

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「うん、壬生狼。沙夜はただ私の手伝いで浪士組の世話になってるだけだから心配いらないよ?」 父親の言葉を気にするでもなく、沙夜の近況をさらりと告げて嘉月が微笑むと父親が息をのんだ。 「置屋は…っ?!もし逃げたのが見つかったら沙夜は…!!」 血相を変えて嘉月に掴み掛かろうとする父親を一歩前に出た新見が遮る。 「落ち着け。沙夜は逃げちゃいない。置屋の女将からこいつが譲り受けたんだ」 ひょいっと親指で後ろを示す。 「そういう事。だから沙夜がこの先花街の娘になる事はないよ。分かったら布団に戻って?」 新見の後ろから嘉月が顔を出した。 「置屋が…沙夜を譲った……?どうして…」 「うち、病気やったの…」 呆然とする父親の袖を握り、注意をひくと沙夜が話を引き継いだ。 「うち、置屋に入ってすぐ病気…労咳になってもうて姉はんに助けてもろたんよ。置屋の姐はん達もみんな、姉はんが助けはったの」 「…労…咳…?沙夜が…死ぬ……?」 ぺたりと父親が土間に膝から崩れ落ちた。
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