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「そんな……」
全員が労咳を発症する可能性があると知った父親ががくりと頭を垂れた。
沙夜は無言で項垂れた父親を見るなり嘉月から離れて父親の前に立つ。
「お父はん、お母はん達はどこにいてる?」
毅然と顔を上げたまま沙夜がはっきりした口調で父親に母親達の居場所を尋ねた。
「……母さん達…は、畑に…」
ノロノロと顔を上げた父親がぽつりと居場所を口にする。
「わかった!うち、呼んでくる。お父はん!姉はん信じて!姉はんは絶対みんなを治してくれはる!!姉はん、新見はん!お父はんの事お願いします!」
そう言って、沙夜は後ろも見ずに駆け出した。
一生懸命走っているのか、小さな背中がどんどん遠退いて行く――
「…あいつ、本当にお前を信頼してんだな。餓鬼の癖に凛として格好いいじゃねぇか」
遠ざかる沙夜の背中を新見が感心したように賛辞を送る。
「ふふ…っ!褒めても沙夜はあげないよ?さて、私は沙夜の期待に応えなきゃね!」
嬉しさに顔をくしゃくしゃにした嘉月は上機嫌で父親の前に立った――
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