第十話

50/99
前へ
/1534ページ
次へ
程無く沙夜が母親達を連れて嘉月の元に戻って来た。 「おかえり!お父さんは終わってるよ」 満面の笑みで出迎えた嘉月が沙夜に向かって親指を立てる。 「おおきに!お母はん、この人がさっき話した姉はんや」 困惑したような顔のまま、沙夜に似た女性がぺこりと頭を下げる。 「沙夜がお世話になったようでありがとうございます…あの、私達に用があるとか…」 「あ、はじめまして。嘉月です。話はどこまで…?」 同じように頭を下げた嘉月が母親に気さくに声を掛けた。 「あ…旦那はんの病気を治してくだはる方がおると…あの、うちの人は…?」 心配そうに母親は奥の部屋を見つめる。 「もう治ったから大丈夫。後は体力さえ戻れば普通の生活に戻れるよ。今は部屋で休んで貰ってる…で、沙夜も労咳だったって話は聞いた?」 「治った?沙夜が…労咳…?」 「…お母はん?」 口を覆い、息をのむ母親の様子に男の子が不安そうに母親を見上げる。
/1534ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4742人が本棚に入れています
本棚に追加