第十話

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「お母はん?うちはもう姉はんに治してもろたから大丈夫。お父はんもすぐ元気にならはるよ」 安心させる様に沙夜が母親に駆け寄り弟にも笑い掛けた。 「でも…労咳は……」 言い難そうに母親が眉を下げ沙夜の背中に触れると優しく撫でる。 「姉はんは治さはる。うちだけやない、置屋の姐はん達の病気も姉はんが治さはったんよ?」 母親の袖を握り、沙夜が一生懸命説明するのを見ていた嘉月もまた母親に話し掛けた。 「見てない事を信じろとは言わないよ。お父さんの事はこれからの様子を見てたら大丈夫って分かって貰えると思うし…。ただ、今、心配なのはお母さんと子供達…かな」 「私達…?」 首を傾げる母親に頷くと嘉月は説明を続けた。 「大丈夫だから驚かないで落ち着いて聞いて?」 子供達を抱き締めながら母親が頷く。 「沙夜とお父さん、どっちが先か分からないけど、どちらかから移ったんだと思う。まだ発症してないだけで一緒に生活してきたお母さん達も労咳の可能性があるんだよ」 「―っ?!」 驚きで母親の体がビクリと揺れる。 「大丈夫。予防って言うか、もし労咳になってるとしても今、治すから。それで沙夜に呼んで貰ったの」 ひとりを治しても周りに発症した人がいた場合、繰り返す可能性があるから…と嘉月はなるべくわかり易い用に説明した。
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