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「嘘だ…ッ!」
「う、うわ…ッ!?」
強い否定に驚いた嘉月が仰け反って尻餅をついた。
「あっ!姉はん!!」
血相を変えた沙夜が嘉月に駆け寄って立ち上がる手助けをした後、弟に食って掛かった。
「馬鹿ぁ!姉はんになにするんよっ!!」
「うるさいっ!このお姉はんが嘘つくのが悪いんやッ!あんなんで病気が治る訳ないやろっ!!」
「なんやて!?姉はんは嘘なんかつけへん!!今日やってうちの事心配して来てくれはったのに…っ!」
幼い姉弟の口論を嘉月は目をぱちくりしながら眺める。
「二人共やめなさい!」
「ッ!沙夜!私は平気だから落ち着いて!」
母親の制止の声に、嘉月も呆然とした状態から復活して沙夜を止めた。
「姉はん…っ!だって、姉はんの事を嘘つきやなんて……!」
目に涙を溜めた沙夜が振り返って嘉月に飛び付く。
「嘘つきに嘘つき言うて何が悪いんや!お父はんは薬飲んだかて良くならへんのにあんなんで治ったなんて言うからや!」
顔を真っ赤にして弟…太一がなおも怒鳴る。
「太一やめなさい。嘉月はんに謝るんや」
騒ぎで目が覚めたのか、奥の部屋から羽織を肩に掛けた父親が顔を出した。
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