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「指…。ちょっと切って治すとこを太一君に見せる」
キュッと下唇を噛んだ緊張の面持ちで嘉月は人差し指をぴっと立てた。
「姉はん!そんなんやめて!」
慌てた沙夜が嘉月に取りすがり止めようとするのを両親は困惑の表情で見守るだけで言葉を発っせないでいた。
それは嘉月の言葉を信じきれていないと言う事に他ならない。
「大丈夫」
しがみつく沙夜を抱き上げて目線を合わせた嘉月が宥めるように微笑む。
「此処に来た理由、覚えてる?」
確認させるように沙夜に問い掛ける。
「…お父はんの病気を治しに…でも!もう姉はんは治してくれはったのに…っ」
悔しそうに唇噛んで沙夜が項垂れた。
「半分当たり。他には?」
ぽんぽんと背中を叩いて嘉月が続きを促す。
「…他に…?」
「そう。他にもあったでしょ?沙夜の家族を安心させるって私が言ったの忘れた?」
「あ…っ」
思い出した沙夜が目を見開いた。
「沙夜が信じてくれるのは凄く嬉しいよ?でもそれは置屋で湿疹とか消えるのを見たからだよね?」
沙夜に言い含めるように、両親達にも聞いて貰えるように、嘉月はゆっくり言葉を続けた。
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