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「…馬鹿。手ぇ離せ」
呆れた口調で新見が嘉月を押し戻す。
「嫌に決まっ……新見ッ!?」
再び新見に飛び付こうとした嘉月の動きが止まる。
「これでいいんだろ…?」
右手で刀を抜いた新見が己の左手に刃を当てた。
そのまま躊躇いもなく刀を引く。
「………っ!痛てて…」
ぱたた…っと土間に鮮やかな朱が散った。
「ばっ!新見ッ!」
慌てて嘉月が血が滴る腕を取る。
「おい、痛ぇんだから揺らすな。そこの糞餓鬼、ちょっとこっちに来い」
刀を収めた新見が太一を呼んだ。
「え…ッ?!」
呼びつけられた太一が戦いて体を揺らす。
「…早くしろ。お前は沙夜の弟なんだろ?」
姉の方が男のお前より肝っ玉が座ってんじゃねえかと嘲笑も露に嘲笑う。
その言葉に太一はギリッと手を握り締めると顔を上げて新見に近付いた。
「……来たで!」
そのまま去勢を張って新見を睨み上げる。
「遅ぇ。おら、良く見ろ」
そういうなり血が滴るままの腕の傷を太一の目の前に突き付けた。
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