第十話

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「…ぱっくり切れてんのが分かるか?」 止まる気配のない出血に顔を青ざめさせた太一がガクガクと頷く。 「ん。…嘉月、頼むわ」 太一の肩を掴んだ新見は嘉月に腕を差し出し、太一を良く見える位置へと引っ張り寄せた。 「…うん。新見、ごめんね…。太一君、お父さん達も見てて」 すぅっと息を整えた嘉月が新見の傷口に両手を翳した瞬間、新見の腕が光に包まれた。 「……あっ!あぁっ!!」 間近で傷口が治っていくのを見た太一が驚愕に声を上げてそのままへたり込む。 その横をすり抜ける様に沙夜が外へと飛び出してゆき、程無く濡れた手拭いを持って新見に駆け寄った。 「新見はん!これ使うて…」 「おう、ありがとよ」 空いてる手で手拭いを受け取り癒しの光が淡い余韻を残して消えるのを待った。 「…終わり。もう…あんまり無茶しないでよ…」 思いがけない新見の行動に嘉月が疲れた声を上げた。 「…成り行きだろ?それにお前や沙夜に怪我させたらこんなもんじゃ済まねぇからな?」 ふんっと鼻で笑った新見が血濡れの腕を手拭いで拭うと顔の前へと腕を持ち上げ結果を示す。 「ちったぁこいつを信じる気になったか?」 呆然とその腕を見つめ、頷く事すら出来ない太一や両親の姿を満足気に眺め新見はにやりと口端を吊り上げた。
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