5/5
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
    不思議な姉弟だ、と浩斗は思った。    ゆづきと別れ中庭に行くと、そこには慧羅、依真と賀勇(がゆう)がいた。 賀勇は武術の師で、此処に来てからはずっと賀勇に剣を習った。 「あ、浩兄」 気付いた慧羅が名を呼ぶ。草履をはいて近寄った。 丁度慧羅が弓の練習をしていたようだ。藁を俵のようにまとめた物に何本か矢が刺さっている。 「おう、お前もやるか?」 賀勇は威勢よく笑った。それに丁寧に遠慮する。 正直、弓は得意ではないのだ。 どちらかというと慧羅と響平のほうが長けている。 依真達の居る縁側に腰掛けて傍観を決める。 片膝を立て片あぐらをかく。 弦の音が響く中、依真が聞いてきた。 「浩兄は聞いた?」 「何を??」 「采真(さいま)国と同盟組む、て話…」 「…何??」 采真は北に隣接する隣国だ。国交は無いわけではなかったが、あまり仲のよい国でもなかった。 昔争いをしていたことが今でも影響しているらしい。 「あちらさんからの要求らしいよ?信幸(のぶひで)様も了承したらしいし…」 そういう依真の声はどこか戸惑いがちだ。 「確かに采真と組めば聖域が近くなるけど…」 黒翼欲しさの要求かもしれない。 何処の王も黒翼の力が欲しいのだ。 「それはあちらと話してみないと分からない。どっちみち国境の話もしなければならなかったんだ」 ぐっ、と背を伸ばす。暖かい日差しに瞼が落ちそうだ。 「珠俐様に聞くのが一番だろう。珠俐様は?」 「錦先生のトコでお勉強だって」 へら、と依真は笑った。 錦は政治を主とする師だ。優しく的確に教えてくれるいい人なのだが、怒らせると正直に怖い。 「あ~…姫様逃げてたからなぁ」 今回ばかりは逃げられないだろう。 浩斗と依真は苦笑するしかなかった。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!