3人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
―何て綺麗な夜だろう
浩斗は一人、刃の様に鋭い三日月を見上げながら思った。
白い月。静かすぎる夜。
季節は春から夏へと移り変わった。蒸し暑い日々が、夜の涼しさで癒される。
平穏な日常が続く毎日が、争いの前の静けさに思えてくる。
<―夜断の動きが読めないんだ…警戒しておいた方がいい>
響平の言葉がリフレインする。
瑠汰は小さい国だ。兵力は他国に勝るが、数が足りない。
比べ、夜断は大陸一大きい国。足りない兵力は数でカバーできる。
そこは荒がう事ができない。
「…何故、黒翼なんてものが有るんだ…」
思わず浩斗の口から愚痴が漏れる。
どうしようもないことなど誰にも分かっているのに、黒翼が平穏を与えてくれることも分かるのに…。
最初のコメントを投稿しよう!