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    ―何て綺麗な夜だろう 浩斗は一人、刃の様に鋭い三日月を見上げながら思った。 白い月。静かすぎる夜。 季節は春から夏へと移り変わった。蒸し暑い日々が、夜の涼しさで癒される。   平穏な日常が続く毎日が、争いの前の静けさに思えてくる。   <―夜断の動きが読めないんだ…警戒しておいた方がいい>   響平の言葉がリフレインする。 瑠汰は小さい国だ。兵力は他国に勝るが、数が足りない。 比べ、夜断は大陸一大きい国。足りない兵力は数でカバーできる。 そこは荒がう事ができない。   「…何故、黒翼なんてものが有るんだ…」 思わず浩斗の口から愚痴が漏れる。 どうしようもないことなど誰にも分かっているのに、黒翼が平穏を与えてくれることも分かるのに…。
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