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「あ、桜。」
「あ、別のクラスになっちゃったよ~。」
わたしと菜美は同時に言った。
「ちょっと彩香、どこ見てんの?前見て前!あたしたち今年はクラス離れちゃったよ~。」
「げ、ホントだ!」
しまった、クラス名簿ぜんぜん見てなかった。
高校2年の第一日目、張り出されたクラス名簿を見る子達で、昇降口前は大騒ぎだ。
でも春休みの眠りから目覚めた学校の、まぶしいくらいの活気を見るのはキライじゃない。
なのにわたしはその時、どこからか飛んできた桜の花びらに気をとられてた。
いつからか、どうしてなのか分からないけど、わたしは桜の花が好きだったから。
甘くて、消えそうなくらい薄い色の花が好き。
そんな花がふわっと魔法のようにいっせいに咲く、春が大好き。
「まあ6組と8組だし、そんなに離れてないからよしとするかあ。」
言いながら、かすかに眉間にしわを寄せてる菜美。
童顔で人形みたいに整った顔には似合わないその表情に、思わず吹きそうになった。
「ちょっと菜美その顔やめてよ!」
「てかうちのクラスあんまりかっこいい子いな~い、暗い一年になりそうだわ。」
さらに菜美は大げさにため息をついた。
釣られて自分のクラスを改めて眺めてみたけれど、知っている名前が少なくて、かっこいいも悪いも全然わからない。
生徒数の多い学校だし、しょうがない。
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