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男の子だ。
見たことのない子だった。
空から差し込む光が、彼の髪の毛をキラキラ輝かせている。
さらさらで、キャラメル色のきれいな髪。
切れ長の瞳も、長いまつげも遠くからでもなぜかはっきりと見えた。
彼は桜の木にもたれかかって、散っていく花びらをぼうっと見ている。
わたしはなぜか、彼から目が離せなかった。
その男の子は桜の花がとても似合っているように思えたから。
彼も桜も、天からの贈り物みたいにきれいだった。
とその時、彼がふと2階を見上げた。
やばいっ!!
彼と目が会う前にわたしはあわてて廊下にしゃがみこんだ。
ってなんでわたし、隠れてんの?
でも彼に見てたところを見られたくなくて、反射的に体が動いてしまった。
キーンコーンカーンコーン
のんきなチャイムの音がして、やっとわたしは立ち上がった。
チラチラ見てくる周りの視線が痛い。
「イテテテッ、もう何やってんだわたしは・・・。」
さらに変な姿勢でしゃがんだせいで腰まで痛い。
でも、見下ろした窓からはもう彼の姿はなかった。
まるで幻みたいだ。
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