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自分で隠れておきながら、思いっきりがっかり。 それでも、彼の姿は頭の中にくっきり焼きついてしまっていた。 と、その時、 パシッ 「あいたっ!!」 わたしは後ろから、何かに頭をはたかれて振り返った。 「お前、何してんだよっ」 「あ、なんだ健にい?」 後ろには、わたしの幼馴染にして今や立派な高校教師、『健にい』が立っていた。 「もうチャイム鳴ってるぞ。早く教室入れ」 「だからって、出席簿で叩かなくてもいいじゃん!暴力教師~!」 健にぃの実家はわたしの家の裏で、小さい時から家族ぐるみでしょっちゅう遊んでもらっていた。 思えばそのころから、子供好きだったんだな。 歳は10歳近く離れてるけど、わたしには「先生」と言うより「健にい」って言う方がやっぱりしっくり来る。 「何言ってんだよ担任に向かって。あと学校では健にい禁止だろうが?」 「え、わたしの担任って健にいなの?」 健にぃは大きな目であたしをギロリとにらんだ。 こ、怖っ! 「お前、ちゃんとクラス名簿見てなかったな!ほれほれ、早く教室に入りなさ~い!」 わたしは健にいにグイグイ押されるようにして教室に入ると、とりあえず空いていた窓際の席に滑り込んだ。 ラッキー、特等席だ! わたしの隣の席はまだ空いていた。
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