コピーとスパイ

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*** 作業場は色んな用途に応じて使われる為、余計な物は一切置かれていない。 真ん中に作業台が置かれている以外は、ハンガーラックからぶら下げられた下着が沢山あるのと、天井まで伸びた棚が置かれているくらいだ。 「坂井、これ、台に置いて」 私は、棚とハンガーラックの間に収納されていたグリーンのボードを引き出して坂井に渡した。 「わ、結構重いっすね」 そのセリフは嘘でしょ、ってくらい、坂井はそれを軽々持ち上げている。 けれど、それは厚手のゴム性で、デスクの板面とほぼ変わらない大きさだから、実際のところ軽い物ではない。 「これ何すか?」 「カッターボードよ。この上で裁断するの。これを置いたらその上に生地を広げて」 背中の坂井にそう言いながら、棚の中段にある引き出しに手を伸ばした。 「えーっと……、ペンと、それにロールカッター……」 手作業の裁断には、細々した道具が必要になる。
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