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目当ての物を見つけて机に置くと、筒状に丸めていたパターンをパラパラと広げた。
「これって、ピザを切るヤツみたいっスね」
坂井は私が今置いたばかりのロールカッターを手にして、しげしげとそれを見つめている。
そして、何を思ったのか、人差し指を刃に近付けた。
「そこに触らないで!」
咄嗟に声を上げたけれど遅かった。
刃にチョンと触れただけの坂井の指には、既にじわりと溢れてきた血液で赤い線が出来ていた。
「わ、何これ。切れ味良すぎ」
少し目を見開いているが、坂井の声は落ち着いている。
「坂井。生地から離れて!」
慌てて言うと、坂井は一歩後ずさった。
数日前、私がファンデーションとグロスのついた部分を切り捨てたのを覚えていたらしい。血がついてしまうと駄目だ、と悟ったのだろう。
私は、また棚に近付いた。
「あれ?ティッシュ切れてる……。
バンドエイドはあるんだけど」
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