コピーとスパイ

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結構、血が出てるし、他の部屋まで取りに行くしかないかと振り返ると、人差し指を唇に挟んでいる坂井の姿が目に映った。 確かに、止血にはそれが一番手っ取り早い。 「あれ、まだ出てくる」 坂井は一度指先を確認すると、またそれを唇に挟んだ。 時折、垣間見える舌の動きが、淫らに見えてしまうのは、私の頭がどうかしているからなのか……。 「それ、貼ってくれます?」 坂井が、私の手に視線を向けた。 一瞬、バンドエイドを持っているを忘れていたから、返事をするのに少し間があった。 「あ……、ああ。指だして」 手が震えそうになった。 坂井の手をじっくり見たのは初めてだ。 大きくて長い指をしているな、と思った。 この手で手首を掴まれたときは意識しなかったのに、自分から振れるというだけで、なぜか凄く緊張した。
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