コピーとスパイ

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*** 作業台に向かい2時間が経過した頃、坂井がぽつんと呟いた。 「サンプルって、全部手作業だったんすね」 「当たり前でしょ。 商品化するかも分からないたかが数枚の物に機会なんて動かせる訳ないでしょ」 そう。手作業。 生地の上にパターンを置いて、重石乗っけて、地道にペンで裁断部分のマーキング。 それが終われば、さっき坂井が指を切ってしまったロールカッターで、キコキコと生地の裁断だ。 坂井が裁断にかかり始めた頃は、よく切れるから面白い、と陽気に作業を進めていたけれど、次第に口数は減っていた。 たかが数枚の裁断と言っても、数枚と言うのは完成品の枚数であって、パターンとなればパーツが幾つもあるのだ。 1時間も経過すれば、裁断に飽きてくるし、腕も疲れてくる。
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