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「リカさーん」
「何?」
しーんと静まった作業場に、カチコチと壁時計の音が響いている。
「腹減らない?」
「うん。
減ってきたわね」
坂井と向かい合わせで作業しているが、お互い手は止めることなく、下を向いたままの会話だ。
「あんたがいきなりこんな事を頼んで来なきゃ、私は直ぐに帰れてたんだけど」
「それは悪いと思ってますよ。
……で、お詫びって言うかさ、終わったら飲みに行かない?奢るから」
「私に気を遣わなくてもいいわよ。
水野さんに奢ってあげたら?」
「何で、水野さん?」
さっきまで籠ったような聞こえ方をしていた坂井の声が、はっきりと正面から聞こえた。
顔を上げたんだろう。
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