コピーとスパイ

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私は下を向いたまま答えた。 「前に水野さんと飲みに行ったじゃない。 デートもしてたし。 水野さんなら彼氏がいたってあんたと遊んでくれるわよ」 「あぁ……。 別に、あの子には聞きたい事があったから誘っただけだし」 「聞きたい事って?」 「スリーサイズとか」 冗談だと分かっていたけれど、突っ込む気にもなれず「ああ、そう」とだけ答えた。 「水野さんを誘う事はもうないよ。 あの子も彼氏がいるなら、その方がいいでしょ」 うーん……。 やはり坂井が読めないなと思った。 女に手を出すのは早そうなのに、坂井はどこかに線を引いて、必ずそれ以上は踏み込まないのだ。水野さんを誘わないと言うのも、本音かもしれない。 けれど、それなら一体何をしたかったのか。 考えてみたけれど、答えは出なかった。 *** 「はい。お疲れ様」 「おつかれー!」 居酒屋、楓。
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