コピーとスパイ

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「俺? うーん……、嫌いな食べ物ってないし、特別好きな食べ物ってのもない気がするなあ」 坂井は頬杖をついた手で口元を覆っている。 考える時の癖かしら、と思った。 「あんたの女癖みたいね。 特別好きな子もいない、みたいな」 やっと熱の引いた頬から手を離し、冗談半分でそう口に出した。 「えぇっ?それの方がどんなイメージ? 女の子はちゃんと好きになりますよ」 「あ、そう?」 楽しい……かも。 こんな話で盛り上がれる事が。 これが川崎さんとなら、絶対にこんな会話にはならない。 「あ、そうだ。サンプル縫製担当の奈々さんって怖くないすか」 「怖い?」 「近寄りがたいって言うのかな。愛想笑いもしないし。あの人と親しく話せる人っています?」
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