78人が本棚に入れています
本棚に追加
「リカさん。どれくらい切ったらいい?」
「1mくらい切っとけばいいんじゃない?
裁断に失敗した時の事も考えて多めにある方がいいと思う」
床に生地を広げ、それを挟んで対面で坂井と話し合う。
「リカさん。何か怒ってる?」
「別に」
私のトゲトゲしい口調に、坂井は何やら悟ったらしい。
はい、正解。とは言えないけれど、今の答え方で気付いただろうと思っていたら――。
「あ、そう?」
そう言って坂井は下を向いた。
あ、そう?って。
納得すんじゃないわよ!
本当に疲れるわ。コイツと居ると。
「ほら、早く切りなさいよ」
坂井はおよそ2m向こうでハサミの先をこっちに向けている。
「1mってどの辺り?」
「そんなの適当でいいわよ」
「じゃ、これくらいか」
坂井がハサミを動かすと、ジョキジョキと音が響いた。
最初のコメントを投稿しよう!