コピーとスパイ

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「お久しぶり。……って、何よこの店。 閑古鳥が鳴いてるじゃない」 「そうなのよぉ。最近、客足が遠のいちゃって。いつも暇してるのよぉ。 それより、後ろのお兄さんはどちら? 葉山ちゃんの彼氏?」 興味深そうに坂井をマジマジと見つめるマスターの視線を手で払いながら、「違うわよ」とカウンターに腰を降ろした。 ショットバー『アリス』 ここは、私にとっての数少ない癒しの空間だ。 ちょっとオカ……、いや、思いっきりオカマチックなマスターだけど、人が良くて気に入っている。 「葉山ちゃん、何飲む?」 「んー……、どうしよ。 坂井は何飲む?」 坂井は店内をキョロキョロと見回していた。 「ねぇ、この店ってトイレないの?」 何を探しているのかと思えば、トイレに行きたいらしい。 「ごめんなさいねぇ。 トイレは他のお店と共同なのよ。 ドアを出てもらって右に行くと突き当たりにあるから」
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