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硬く目を閉じたまま、小刻みに首を横に振った。
「鼻も隠れてるから酸欠になるよ?」
もう一度、首を振った。
「そ?じゃあ苦しくなったら、ちゃんと口で息してくださいね」
坂井はそれだけ言うと、食べるようなキスで私の唇を貪った。
私は絶対に、口で息はしないと思っていた。結んだ唇を開けば、キスの感触を知ってしまうと思ったからだ。
けれど、坂井の言ったとおり、直ぐに息苦しくなってきた。
頭がぼんやりして、体が熱くなった。
心拍数も上昇している。
そろそろ坂井も諦める頃なんじゃないか、と思って我慢していたとき、坂井はそれを見計らったかのように耳の後ろをくすぐってきた。
「は……!」
思わず大きな息を吐いた。そして息を吸った。生地が引っ付くばかりで、吸い込んだ半分も酸素が入ってこない。
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