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「苦しいでしょ」
坂井は私の腰に回していた手で、生地を少しだけ下に引っ張った。
生地に覆われていた鼻が出たことで、息がしやすくなった。
けれど、坂井は力が抜けている私の唇に、自分のそれを押しあててきたのだ。
生地を隔てていても、坂井の唇の厚みや動きが直接伝わってくるようだった。
「やば……。舌いれたくなってきた」
呟いて坂井が離れた。片手で口元を押さえている。
酸欠状態で頭がぼーっとしていたせいかもしれないけれど、多分、私も同じ気持ちだった。唇の触れないキスというのがもどかしくて、その先を求めていた気がする。
「リカさん」
「な、なに」
胸の鼓動が激しさを増した。
何かを期待したのかもしれない。
「俺が欲情しそうなんで終わります」
坂井はペコリと頭を下げた。
は……?
はあっ!?
何ソレ。
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