2人が本棚に入れています
本棚に追加
「…うむ。そうだな。俺は南雲太郎という。警視庁捜査一課の刑事だ」
「わかりました。それではお話しましょう」
晶子は、明け方の出来事をかいつまんで説明した。
「それでは、ホシは二人組の男たちだというのだな」
「そうです。会話のなかで、ボスらしい人が兄貴と呼ばれてました」
「しかも、手際の良さから見て、この邸の内部に通じていたようだな」
「そうですね。それに、わたし犯人たちが逃走した黒塗りの車のナンバープレートを見ました」
「なに、そうか。それは重要な手がかりだ」
晶子が記憶していたナンバープレートを説明すると、南雲は手帳に書き込んだ。
「礼を言う。ところで、お前も怪しいのだが…名前は?」
「わたしは朝倉晶子です。ここの娘のあかねさんと同じ高校の定時制に通っています。この四月から私立桜花高校の二年生になります」
「朝倉晶子?桜花高校?はて、聞き覚えのある名前だが…」
「わたしも、刑事さんのこと思い出しました。昨年、東京郊外の村上院長が殺されたときに桜花高校でお会いしました」
「うむ、そうだ、あの時の透明細胞だ。俺はずっとその言葉が引っかかっていたのだ」
「それで、あの事件はどうなったんですか?」
「あれは、捜査が行き詰っている」
「あの犯人は透明人間です」
「なに?透明人間?おいおい、お前、座敷わらしの次は透明人間か?」
「刑事さんも透明細胞と言ったじゃないですか。犯人が透明人間だから警察には捕まえられないんです」
「ふむ、透明細胞が本当にあそこにあったということか。しかし、お前。どうして、そんなことを知っているのだ?」
「わたしも半分、透明人間だからです」
「なんだと、お前、どこからみても普通の人間じゃないか。いや、待て。…とするなら、あそこで俺が見た透明細胞と書かれたラベルが付けられるはずの容器の中身は…」
「わたしの細胞です。村上院長はあそこでわたしが眠ってる間に、わたしの細胞を採取して、それを調べていたんです」
最初のコメントを投稿しよう!