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桜は呆れたようなため息を一度つくと
「あんたねぇ、そんなに鈍いとモテないわよー?」
そう言いながら
デスクにあった書類を瀬戸へ差し出した
「どういう意味だよ」
瀬戸はそれを受け取らずに
いかにも不機嫌そうな顔で答える
「年頃の女の子にはいろいろあるんだからさっさと書類!」
桜がそう言うと
瀬戸は大人しくその書類を受け取り
詩織を一瞬見つめた後
保健室を出ていった
二人きりの保健室
静まり返る室内
「まぁ、とりあえず座りましょうか」
そう言って桜が自分のデスクの椅子に腰掛けると
詩織は重い足取りで
向かいに置かれた椅子に腰掛けた
「さて…心臓が痛いのよね?」
「…はい」
詩織はわかりやすいほどに落ち込んでいる
──なんなんだ、さっきの。
ふたりは付き合ってるのか?
先生は生徒に手をだしているのか?
「詩織ちゃん、幸也くんのこと好きなのね」
そう桜に言われ
詩織の心の中がまた波を立てる
胸が…締め付けられる
「そうなんですかね…?」
詩織のその言葉を聞くと
桜の態度は一変した
「うーん…叶う確率は低いわよ」
「え…じゃあやっぱり…」
「さっきの見てたでしょー?私達できてるの。」
「じ、じゃあ先生は生徒に手を出してるんですか!?」
詩織の口調は
少し怒りも混じっていた
でもそれは桜が生徒である瀬戸に手をだしていたことが許せなかったからではない
瀬戸の相手が
瀬戸の好きな相手が
自分より遥かに大人で可愛くて
女らしい、桜だったことが
ショックであると共に
まったく勝ち目がないことが痛いほどにわかったからだ
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