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健人と別れた後
瀬戸は下駄箱にいた
外はあいにくの雨
──雨…だが俺は馬鹿ではない
雨よ、諦めろ
俺は傘を所持している
そう心の中で呟きながら
外へと出ると
見慣れた馬鹿の後ろ姿
瀬戸は無言で傘を彼女へと傾ける
ポツポツと自分の肩に落ちていた雨が急に止んで
びっくりしたのか
瀬戸の方を見た
「あ、瀬戸…」
詩織だ
「あんた天気予報見なかったのか?」
「私は天気予報より占い派だから。」
「ふっ。あんたらしいな」
「笑うなこの野郎」
──くそ、瀬戸め
雨に濡れている乙女に傘を差し出すなんて、反則だ
もし瀬戸にあんな完璧な彼女さえいなければ…この優しさもこんなに苦しくないのにな。
「帰るぞ」
「おう!なぁなぁ瀬戸」
「ん?」
「私の肩全部傘かかってないぞよ」
「…全部かけたら俺が濡れるだろ馬鹿」
馬鹿。
当然瀬戸がいろんな意味を込めていたことは言うまでもない
「馬鹿ァ!?」
詩織が立ち止まると
瀬戸もびっくりして立ち止まる
「なんだよ」
「はぁ!瀬戸ってやつは!!
いーい!?こーゆー時は男は黙って濡れるのーーー!!」
「あんた、男とか女とかそーゆん嫌いじゃなかった?」
「えっいや、えーと、それは…」
──鈍感め
どっちが馬鹿だ、え?
紛れもなくお前だっ!!!!
女の子はいつだって…
好きな男の子の前では乙女なの。
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