33人が本棚に入れています
本棚に追加
「いや、帰ろ!健人くん」
詩織の一言で
瀬戸の計画は全て崩れた
「お前…ちょっと来い」
健人を背に
瀬戸は詩織の腕を引っ張り
健人から少し離れた場所で立ち止まる
「何よ」
「何よじゃないだろ?
家まで送ってもらう気か?」
詩織は傘を持っていない
そんな詩織と健人が途中で別れるはずない
「そうだよ、悪い?」
詩織は完全に意地を張っていた
「いや…あんたらしくないんじゃない?」
その一言に詩織の心が揺れる
──瀬戸は私を思って言ってくれてるのか
しかしその思いは瀬戸の次の一言で壊される
「それに最後まで送ってもらったら家わかっちゃうだろ?」
詩織の家をわかってる人達はたくさんいるだろう
詩織の友達はもちろん、担任など。
しかしいずれもバレてもそんなに問題ない
…いや、問題だが。
少なくとも健人ほどではない
まだマシだ。マシじゃないけど
比較的マシだ。
でももし健人にバレたら
どうなるか…それが心配だったのだ
しかし…
「瀬戸の馬鹿」
事情を知らない詩織は
完全に不貞腐れている
詩織は瀬戸に背を向けると
健人の方へ戻った
「行こっか健人くん」
そんな詩織を見て
「おい待てって!」
つかさず瀬戸が叫ぶ
しかし…
「こーやの意気地なし!!チキン!!びびり!!私はあんたと違って肝っ玉据わってんの!あほ!」
詩織はそう言って
健人と共に瀬戸の元から去っていった
“こーや“
彼女が彼をそう呼ぶときは
怒っている時か心が弱っている時だ
「そのこーやはどっちのこーやなんだよ…」
そう呟いて
瀬戸は彼らとは逆方向の道へと歩き出した
最初のコメントを投稿しよう!