33人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただいまぁ」
そう言って玄関のドアを開け
靴を脱ぐ詩織
しかし…瀬戸の靴がない
「おかえりー」
いつもはいない時間帯なのに
珍しくいる光子
「あ、ママ、瀬戸は?」
そう言って冷蔵庫を開け
アイスクリームを取り出す詩織
「バイトよ」
慣れたようにスプーンを詩織に渡す光子
そのスプーンを受け取り
カップのアイスクリームをすくい
口元へ運ぶ
「うめぇ……あぁ、瀬戸バイト?なんの?」
「飲食店みたいよー」
「てかなんでバイトしてんの?」
治療の為に少なからず
バイトはしといた方がいいでしょ
なんてことは言えない
「そりゃ学生だもの遊びたいでしょ?それに瀬戸くんのことだから
ただで住むのは悪いとか考えたんじゃないかしらねぇ…」
我ながら妥当な嘘だと光子は思った
「ふーん…」
──じゃあこれから家に帰っても
なかなか瀬戸には会えないのかな
…つまらないな。
新しい恋を始めると言ったものの
それとは裏腹に思うことは
瀬戸のことばかりだった
最初のコメントを投稿しよう!