大地 そして空

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大地 そして空

「わ~、大っきな樹だね、おじいちゃん」 「2000年生きているからね」 「にせんねん!? ってどれくらい?」 「ははは、そうだな。 お前が体温を1℃変えるくらいの時間かな」 「たった1℃? ふーん。 ……あ、おじいちゃん、セミが転がってる。動いてるよ。樹に戻してあげたいな」 「そっとしておきなさい。そのセミはもう寿命なんだ」 「死んじゃうの?」 「セミは何週間か鳴いたら命の終わりが来るんだよ。 そうしたらまたお前の中に戻るんだ。 その樹の中にも、きっと命が受け継がれていくよ」 「ふーん。 知らないこと、いっぱいあるね。 アタシの一部なのにアタシ、知らないことばっかり。なんでだろ」 「みんなお前の一部だけれど、お前のモノじゃないからね。 お前が自由にできる訳じゃないんだよ」
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