ツクツクボーシ

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次の朝は、お陽さまが待ち切れなくて、ボクは暗いうちから歌い始めた。 お陽さまは今日は顔を見せなくて、代わりに近くまで降りてきた雲が、雨粒を落としていた。 でもなぜかボクは全然濡れなくて、昨日みたいに思い切り歌えたんだよ。 「綺麗な声ね、あなたは。 いくら聴いてても飽きないわ」 不意に話しかけられて、びっくりした。 「きみはだあれ?」 「あなたがしがみついてるのが私。クスノキよ」 「あっ、これがきみなの? ごめんなさい、勝手によじ登って」 「気にしないで。 そこはあなたが生まれた場所。あなたが私の足元に潜っていく前から、私はあなたを知ってるの」 「ボクが歌えない時から?」 「ええ。ずっと待ってたの。 だから気にせずに好きなだけ歌って。あなたの歌が聴きたい」 よく見たらクスノキは、腕を広げ指を開いて、ボクが雨に濡れないように包んでくれていた。
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