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「あっれぇ~お前、もしかしてコタロー?」
「…っ!?」
虎太郎の名前を呼んで近寄ってきたのは、虎太郎を苛めるクラスメイトのリーダー格だった。プレイヤー名は、ケンジ。
「やっぱりお前もゲームしてたんだなぁ」
「……」
「このガキなに?」
ウィズダムが指を差しながら言った。
「これがお前のドール?おれが書いてやったドールの方がお前には似合いだろ!」
ケンジはコタローの肩を押すと、ポケットに手を入れて紙を取り出した。
すっかり忘れ去られていた紙は、くしゃくしゃになっていた。書かれているのは、毛虫に近い落書きとヨワムシの文字。
「…っ」
虎太郎は恐怖に、涙目になり俯く。
「コタロー?」
「お前には、こういったドールの方が似合ってんだよ!!」
紙を前に出して、ケンジは威張るように笑う。隣には軽く鎧が装備された図体の大きいドールが一体いた。
「なんだよコレ?」
「おれが考えてやったコタローのドールさ」
「……弱虫のドールだぁ?」
「名前もヨワムシいいだろ!」
「何が良いんだよ、ただのキタねぇ物体じゃねーか」
ウィズダムは思いきり、ケンジの頭に拳骨を落として左頬を叩いた。
「いっ、いってぇぇえ!!!」
「貴様、私の大事な主になんてことしてくれる!!」
ウィズダムの胸ぐらを掴み、持ち上げるのは、ケンジのドール。コロンブスだ。
「コロンブス、そんなドール壊してしまえ!!親にも殴られたことないおれを…よくも殴ったな!!」
「…はっ、バカいえ」
ウィズダムは、コロンブスの手をすんなりと抜けて頭の上に立つ。あまりの素早さに気づかなかったコロンブス。
「そういう奴って、甘ったれって言うんだよ」
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