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「おれたちも急ごう」
「オレ様が全部倒してやる」
「……」
虎太郎たちは、他のプレイヤーたちより一足遅く鬼退治に向かう。村の奥にある森に続く出入り口に着くと、叫び声が聞こえて数人のプレイヤーと血だらけのドールが走ってくる。
「あれは、鬼じゃねー!!」
「人食い鬼の人種だ」
「……え、なに?」
「どういうことだよ」
森の奥では、叫び声が響き続ける。
「……ひとくい、鬼?」
村人が、騒ぎだし家の中に避難していく。イベントはいくつも参加してきた虎太郎だが、未だにいい成績は残せておらず、アイテムも逃す事が多い。
「今、人食いって…」
「…村人を食べるイベントじゃない?」
先々と躊躇いも恐怖もなく進むウィズダム、それに続くようにラージが森に進むが、虎太郎は出入り口で立ち止まる。
「コタロー、何してるの?」
「…ぇ、あ……ぃゃ…」
「……あのさ、強くなるんだったらイチイチ怖がらないでくれるか?」
「だっ、だって…みんなボロボロだよ」
「だからって、おれたちまで負けるかなんて分からないだろ」
ラージに腕を引かれて、無理矢理森に入れば、叫び声がより一層大きく聞こえる。
「……怖い…怖いよ」
ラージを盾にしてしがみつきながら前に進んでいくと、ウィズダムの叫び声が聞こえた。
意気揚々した雄叫びだ。
「うっはー!!!デケェー!!!」
目の前には、五メートルはありそうな巨大な赤鬼が金棒を手に仁王立ちしていた。
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