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「確保」 「おわ!!『瞬神』、はなせ!!」  ユウの背中に回ったジンが、羽交い絞めにして持ち上げた。  無駄だと分かっていても抵抗していたユウは、音が鳴り止んだことに気づいたと同時に・・・・・・さあ、と忽ち降り落ちてきた雨を見て、それから音源のあった場所へ目を向けた。  そこには、仁王立ちで厳しく見下ろされながら、しくしくと泣いている、あの『血塗れの殺戮人形』の姿があった。 ────な、泣いてる。  あの元『血塗れの殺戮人形』で、元『シュヴァリエ』で、『伝説の英雄』のあいつが。  ただのおしりぺんぺんで、泣いている・・・っ!!  元強敵であると同時に、この国の古代王族の末裔でもある少女に対して、容赦もなく躾けた同僚に、ユウは背筋を凍らせた。  制裁を終えたフェローラは、今度はその眼を、ユウに向けた。 「今度はお前だ・・・ユウ」 「え、へ?・・・えええ!?何でだああ!?」 「連帯責任だ」 「俺関係ねえじゃん!!そもそもこいつが独りでやったことで!!」 「問答無用」 「い、いやだああああああああああああああああ!!!!」  絶叫を上げて、必死に抵抗するが、ジンによって脇を抱え込まれ、先程のアサと同じ格好にさせられ。そして。  バッシーン!! 「んぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」  ・・・今度は、ユウの叫び声が木霊した。 「うっ・・・うっ・・・っ!」 「いたい・・・ぎるにも、のがーどにも、されたことないのに・・・・・・」  ぺたんと座り込んで涙するアサの横で、床の上に放り投げられたユウが、うつ伏せの状態で嗚咽を鳴らす。  ・・・その一部始終を、敷地内の遠い場所から、持参した黒の折りたたみ傘で雨をしのいでいたギルバートが、目撃していた。 「ユウ様・・・・・・アサ様・・・・・・」  恐らく、この世で最も恐ろしい近衛連隊長であり、母でもあり、姉でもある人物の制裁によって、泣きじゃくる大切な子供達を眺めながら、ギルバートはドン引きしたのであった。
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