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「ラクシャサくん」
姫の右隣の、一番長身の小人が合図すると、一番端の黄色の小人が前線に立ち、両手を前に掲げた。
そして、轢き殺そうと速度を上げるトラックに向かって、立ち退くことなく、右足を引いて、体重を前方に集中すると・・・────文字通り、正面から押しとめた。
グシャン!!と、音を立てて押し負けたのは、トラックの方だった。
圧倒的に小さいにも関わらず、一歩も引くことなく、重心を前に傾けたまま、尋常ならざる腕力を持って、トラックを横に薙ぎ払った。
横に車体が浮いて、物理の法則も加わり、大きく盛大にトラックが横転し、取り払われた箇所から、ラウルだけでなく、グループ三人もまた放り投げられた。
「わっ!」
身体が浮いて、外に転がり落ちたラウルであったが、地面に激突する前に受身を取って、即座に体勢を整えた。
「くそ、何だってんだ!?」
悪態をつく、誘拐犯達。
そこへ、凄絶な五つの波動が爆発して、彼らに襲い掛かる。
「おい・・・」
実行犯も、運転座席から投げ出された彼らの仲間も、その五人の身体から発せられる波動に、心臓を鷲づかみにされた。
「てめえら、良い度胸をしてんじゃねえか。俺らの前で誘拐なんてよ・・・」
五人の内、真ん中のお姫様の格好をした銀色の瞳が言葉を発する度に、彼らに付きまとう不可視の風が、だんだんと重くなる。
首を絞められているような錯覚を起こし、ぶるぶると震えだした犯人達に、冷徹な色を含めた声が止めを刺す。
「────死ぬ覚悟は出来てんだろうな?」
途端に、姫を中心に、尋常離れした『氣気』の波動が苛烈さを増した。
真正面から受けた犯人達は、その気を受けて、白目を剥いてばたりと、次々に倒れていった。
最後の一人が気絶したのを見て、五つの波動がぴたりと止む。
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