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唯一、気を失うことなく、それを目の当たりにして、茫然自失の状態となったラウルに、銀色の瞳の姫が近づいた。
「大丈夫か、ラウル?」
ぶっきらぼうな口調だが、目の前の英雄は確かに、ラウルの名前を口にした。
差し伸ばされた白いアームカバーの手を、ラウルは恐る恐る取った。
起立を助けてやると、反対の手でラウルの肩を叩いて、その脇を通り過ぎて、対象者の元へと向かっていく。
通り過ぎ様、耳に微かな風が通り過ぎた気がして、ラウルは瞳孔を縮小した。
────お疲れ。
本当に微かだが、そう聞こえた気がした。
そんな気がして、ラウルは胸の内に熱が宿ったのを、感じ取った。
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