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四月も終わり、五月の連休が過ぎた後。
久しぶりの登校日。最後の授業が終わって、放課後に突入した。
わいわいと、クラスメートが帰り支度をする中で、左頬に大きな白いガーゼを張っていた、二年生Sクラスのユウ・スウェンラは、疲労感たっぷりの溜め息を吐いた。
「はあ~疲れた~・・・連休明けっていうのに、どうしてこんなにも疲れるんだよ・・・」
最後のホームルームが終わるや否や、机に伏っつぶして、ユウは低く呻いた。
彼の疲労の理由は、連休中に起きた数々の出来事のせいなのであるが、割愛する。
「ユウ。部活に行くぞ」
「お前らだけで行け。俺はもう帰る」
「今日はこの前の発表会の打ち上げだ」
「疲れてるんだよ。じゃあな」
引き止めるアサを跳ね除けて、一人鞄を肩から担いで、教室を後にしようとしたユウであったが。
「ん?」
「お疲れ様です、ユウ先輩!」
ドアの直ぐ向こうに、ラウル・カークランドが明るい表情で立っていて、ユウは止まった。
「何か用か?」
「今から部活動なんで、呼びに来ました!」
いつもと違って、溌剌とした表情をするラウルに、ユウは虚を突かれた。
その隙をつき、ラウルはユウの腕を掴んだ。
「さあ!行きましょう!」
「んのわっ!?」
不意討ちされたのもあって、片腕をがっしりと固定され、そのまま強い力で引きずられていくユウと、軽くスキップするラウル。
その光景を、教室のドアから覗いていたアサら四人は、瞬きを繰り返した。
「あんな仲良かったかな?」
「いつの間に・・・」
「ふうん・・・」
リナの呟きの後に、リュウも呟いて、フェイルが間抜けた声を漏らす。
そして、三人の後ろから見ていたアサも、感情表現の乏しい金色の瞳で、無感情に見据えていた。
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